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Page:Onishihakushizenshu04.djvu/667

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可知なる現象は凡べて進化の法則に從ひ行くものにして、謂ふところ進化の法則は分化(differentiation)と統一(integration)とが相並びて進み行くことの謂ひなり。混沌たる星雲の狀態より始めて太陽系統の形づくられ、地上に於いては地質上の變化を始めとして生物の進化に至り、終には人類の社會的進化に至るまで凡べて同一なる進化の法則に從ふものなり。而して此等は何等かの目的を具へ之れに向かひて進むに非ずして物質と其の運動との自然に然らしむる所なり。然れども進化の或段階に於いて物質及び其の運動より如何にして意識作用の生じ求たるかはスペンサーの說き難しとする所なり。

近時の思潮の大特色ともいふべきは進化といふことなり、而して此の大思想は全く其の學脈、學相を異にするヘーゲルとスペンサーとが共に其の哲學の骨髓とせる所なり。盖しヘーゲルの哲學は理想の有目的なる進化を說くものにして、スペンサーの哲學は物質及び其の運動の機械的進化を說くものなり。


大西博士全集第四卷西洋哲學史下卷畢