Page:Onishihakushizenshu04.djvu/553

提供:Wikisource
このページは校正済みです

觀に應用せらるゝなり。一體、多性及び全體の三範疇を用ゐる時の圖式は數(即ち同樣なる部分を時間に於いて相重ねたるもの)なり。實有の範疇を用ゐる時の圖式は充たされたる時間(即ち時間に於ける有)なり、非有の圖式は虛なる時間なり、制限の圖式は充たされたる事に限りの有る時間なり。體性の圖式は時間に於ける常住、因果の圖式は時間に於ける規則立ちたる前後、相關の圖式は時間に於ける物の共在なり。可能、存在及び必至の圖式は何等かの時に於いて在り得べきこと、或一の定まりたる時に於いて在ること及び凡べての時に於いて在ること是れなり。此くの如く時間に於ける或關係即ち圖式が媒介となりて各範疇が直觀上の現象に用ゐ得らるゝなり。

《純自然科學の基礎。》〔二一〕上に述べたる圖式に從ひ範疇を用ゐることに因りて吾人は自然界に於ける法則を立することを得、而して此等の法則は吾人の先天的に立し得る所のものなり、盖し自然界其の物は吾人が之れに對して此等の法則を與ふることによりて始めて成り立つものなればなり。此のゆゑに吾人は自然界に關して先天的に立し得る知識を有することを得。而してかくの如く吾人の先天的に立し得る