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とを得ず。若しかゝらば遍通必然の判定を下し得べからず。唯だ空間及び時間が吾人の心性其の物の作用なるが故に如何なる事物も其の見樣の中に入れられずして吾人に取りて經驗上の事物となること能はざるなり。
《空間は外官の形式、時間は內外兩官の形式なり。》〔一二〕此くの如く時間及び空間は吾人の直觀の形式なり、之れを直觀の形式と云ひ或は純直觀といふは直觀に於ける素材たる感覺に對していふなり、感覺を抽き去りて後直觀に於いて殘るものは此の形式なり、素材たる感覺と時空の形式とが相合して茲に感官的直觀といふものが成り上がるなり。
詳しく云へば、空間は外官の形式にして時間は內官の形式なり。盖し吾人が外物と名づくるものは凡べて空間に於いて共在するものにして、吾人の心內に意識するものは凡べて時間に於いて連續するものなり。然れども空間に於ける事物も又吾人の心に於いて經驗せられ而して心に於ける經驗は凡べて時間の形式の中に在るものなるがゆゑに吾人の外物を經驗するや又時間の中に於いてす。故に時間は內官の形式なるのみならず、間接には又凡べての事物の形式なり、事物の出沒變化するや凡べて時間の形式の中に於いてせざるなし。