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空の形式が後天的ならぬことを示すものなり。
次ぎにカントは時空が吾人の槪念ならざることを論じて曰はく、空間は唯だ一の相連接したる空間としてあるのみ、時間は唯だ一の繼續したる時間としてあるのみ、多くの空間又は時間を槪括する所の槪念ならず。個々の時間又は空間は一つの時間又は一つの空間を幾多の部分に區別したるものに外ならず、槪念が個々の物に對する關係は全く之れと異なり個々物が一槪念の中に在りて其の個々の部分を成すといふに非ずして唯だ一槪念に屬するものとせらるゝなり。然るに個々の空間及び時間は一の空間及び時間の部分に外ならず、是れ時空が槪念に非ずして直觀なる所以なり。尙ほ時空の槪念ならざることは其が無際限の分量を有し居るものなることを以ても知らるべし。吾人は空間及び時間の量に制限を附すること能はず即ち時空には限りなく多くの部分ありと云はざるべからず。然るに槪念てふものは其の中に限りなく多くの部分を含むべきものにあらずして若干の定まれる性質を指して云へるものに外ならず、此の故に時空は先天的なる直觀なり。