Page:Onishihakushizenshu04.djvu/533

提供:Wikisource
このページは校正済みです

經驗するや時間及び空間の形式に入れて之れを知覺す、而して此の時空の形式は槪念に非ずして純直觀(詳しくは純直觀の形式)にして且つ其の形式は先天的のものなりといふに在り。彼れ以爲へらく、時空の形式は先天的なるものにして且つそれが純直觀なればこそ數學に於いて遍通必然なる綜合的判定の形づくらるゝなれと。彼れは先づ時空の形式の先天的なることを論じて曰はく、(一)時空は經驗に由來するものに非ず、何となれば其は吾人の經驗したる事物より得來たるものに非ずして、其等の事物は寧ろ時空の形式を假定するもの、換言すれば、空間に隣接し時間に前後して始めて經驗上の事物たることを得るものなればなり、簡に言へば、空間に於ける共在及び時間に於ける繼續が經驗を成り立たしむるにて、經驗が時間空間を作れるにはあらず。換言すれば、時空は吾人の知覺を成り立たしむる根本的條件にして知覺を待ちて始めて成り立つものに非ず。(二)空間及び時間は必然なる觀念なり、吾人は能く種々の事物を無きものと考へ去ることを得れども時間及び空間を考へ去ること能はず、即ち時空は事物の存在するに必須なる條件にして而して吾人が其の如く必然に時空に於いて觀ずるといふこと是れ即ち時