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更に其の一千七百七十四年頃の純理哲學講義(ペリッツ Pölitz が始めて出版したるもの)に於いては、カントは尙ほ一步を彼れが後の批評哲學の立脚地に向かつて進めたるを見る。
カントが其の批評哲學を發表して歐洲の思想界に一大新時期を開き出だせる名著『純粹理性批評』("Kritik der reinen Vernunft")は一千七百八十一年に出版されたり。彼れがメンデルスゾーンに送れる書翰によれば、此の書に陳述したる所のものは少なくとも十二年間の熟慮の結果にして其の編述は四ヶ月乃至五ヶ月の間に成し了へたるものなり。彼れ曰はく、此の書に於いて最もよく注意したるは其の內容にして特に讀者をして其を解し易からしめむ爲めに編述の體裁に力を勞することをなさずと。盖し彼れの此の書を編述するや恐らくは彼れが其れより以前にものしたるものをも其の中に容れ込めたりと考へらる。此の書完成の時日に就きては史家の間異說あれど多分一千七百八十年に成れりしものならむ。此の書の第二版は一千七百八十七年に出版せられたるが、カントは其の第二版に於いては第一版に改竄を施したる所なり。斯く改竄を施したる第二版は果たしてカント