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Page:Onishihakushizenshu04.djvu/490

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びも生まれ變はりて一般人類の其の時に進步し到れる段階に進み到ることを得るものなりと考へたり。

《通俗哲學者メンデルスゾーン及びニコライ。フリードリヒ大王。》〔七〕哲學を解し易き形に於いて當世に說かむとしたる者即ち通俗哲學者と名づけらるゝ者の中最も主要なるはメンデルスゾーン及びニコライ等なり。モーゼス、メンデルスゾーン(Moses Mendelssohn 一七二九―一七八六)は猶太人の家に生まれき。彼れに從へば、哲學は吾人の常識を以て認めたる事柄を更に明らかに又更に確實にするものなり。彼れは神の存在及び靈魂の不滅を論證せむことを最も力めたりしが其の論證は畢竟ずるにヺルフ學派の所說より得來たれるものなりき。彼れの志せる所及び其の說ける所には頗る高雅なるものありと雖も其の思想に於いては特に發明の見として取り出でて言ふべき程のものなし。

ニコライ(Nicolai 一七三三―一八一一)はレッシング及びメンデルスゾーンと相友たり、彼れは世人をして諸〻の迷信、偏執及び口碑等の束縛より脫せしめむことに其の力を盡くせり。啓蒙的運動の方面に於いて彼れが力の及べる所は決して少小ならざりき、されど建設的方面は彼れの長所に非ず、又彼れ自らの所懷に於いて其