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ざりき。

《ディデローの著作、思想。》〔二七〕アンシクロペディストの中に在りて最も傑出し最も多才多能にして濃厚の情を湛へ、詩人にして又哲學者たり、其の辯論及び文筆を以て當代に偉大なる影響を與へたる者は


ディデロー(Diderot 一七一三―一七八四)

なり。其の初期の著作に於いては彼れは猶ほデイスト風の立脚地に在りて天啓的宗敎の成立し得べきことを信じ、神の存在を否む者に向かひて盛んに攻擊を加へ、道德論に於いてはシャフツベリー風の思想を懷き居たりしが、其の一千七百四十七年に書き下したる "Promenade du Sceptique"(此の書は一千八百三十年 "Mémoires, Correspondance et Ouvrages inédits de Diderot" に於いて始めて世に公にせられしものなり)に於いては彼れは已に懷疑說の見地に進めり。次ぎに一千七百四十八年に著はしたる "Pensées Philosophiques"(此の書は巴里議會の命によりて燒かれたるもの)に於いては其の後年に唱道したる自然論的萬有神說に向かへる跡を示し、尙ほ