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"Pensées sur l'Interprétation de la Nature"(一七五四出版)に於いては更に明らかに彼れが後年の說を現はし、而して彼れが最後の立場は一千七百六十九年に書き下したる『ダラムベールとディデローとの對話』("Entretien D'Alembert et de Diderot")及び『ダラムベールの夢』("Le Rêve de D'Alembert" 此の兩書は上に揭げたる書と共に一千八百三十年始めて世に公にせられたるもの)に於いて最も善く現はれたり。彼れが『アンシクロペディー』に其の筆を揮ふや其の懷抱を表はすにも禁止の累禍を免れむが爲め故らに婉曲の筆を用ゐたるを以て彼れが眞實の意見は明らさまに其の中には發表せられ居らず。

ディデロー說いて曰はく、物質其の物が生活及び意識の作用を具し居り、物體の無始無終なるが如く生命及び精神も亦無始無終なるものなり、生命及び精神は唯だ機械的變動の結果として見ることを得ず、生なき個々の部分が相集まりて生ある一物を生ずといふは考ふべからざることなり、故に生物の種子は本來存在し居るものと考へざるべからず、高等なると下等なるとの別は唯だ前者に於いては生命及び精神作用が相集結し後者に於いては其の放散し居ることに在り。感覺作用