Page:Onishihakushizenshu04.djvu/439

提供:Wikisource
このページは校正済みです

已にデカルトが有機物の生活も亦須らく機械的作用として見るべきものなりと唱へたりとは云ふものから純然たる物體界の運動の全く機械的に說明し得べきものなることのニュートンの證明によりて疑ふべからざることとなりたる如くに明瞭なる證明を與へられたるにあらず。ニュートンが物理學上證明したる機械說を能く生物上の現象にも適用し得るか否かは實に當時に至るまでの一大問題なりき、而して之れが解釋に一步を進めむと試みたるは


ビュフォン(Buffon 一七〇八―一七八八)

が唱へ出でたる有機的分子(molécules organiques)の臆說なり。彼れの大著 "Histoire naturelle générale et particulière"(一千七百四十九年以降其の死に至るまでに三十六卷を出版し彼れの死せし翌年拾遺七卷を出版せり)は其の文章の美なることに於いて佛文の一好模範とまで見られてアンシクロペディーと共に廣く愛讀せられ又それと同樣なる影響を當時の思想界に與へたり。

ビュフォン以爲へらく、他の力を假ることなくして自ら繁殖するやうに原子の結