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《モンテスキュー及び其の政治論。》〔八〕モンテスキュー(Montesquieu 一六八九―一七五五)は其の名著『萬法精理』("Esprit des Lois" 一七四八出版)に於いて歷史上の事實を硏究することによりて其の政治論を造り建てむとせり。彼れの政治を說くや諸國の制度及び法律の成り立ちを考へ、そが自然の狀態に重きを置きて其等は唯だ故意に造り設けたるものにあらずして風土、風俗、宗敎及び其の他一切の國民の氣質と相離れざる關係を有し居るものなりと見たり。此の點に於いてモンテスキューは十八世紀に於ける一般の思想の標準以上に位せりといふことを得。かくして彼れが一國の制度及び法律と其の自然の狀况との關係を見るや、一國の法律は其の人民に對して特殊なるものならざるべからず、若し一國の法律が他の國の人民に適することありとも其は唯だ偶然のことと云はざるべからざる程に兩者の關係は親密なるものなりと云へり。斯く彼れは一國の制度と其が自然の狀况との間に離すべからざる關係の存在することを見また多少歷史上の關係に眼を注ぐ所ありき。されど彼れが理想的制度としたるは畢竟英國の憲法政治にして而して英國の政治を考ふるにも某が如何に歷史的に成立したるかを見たるにあらずして專らロックの政治論