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及び哲學硏究の結果を世に普及せしめたる功績は最も多く所謂アンシクロペディスト(encyclopédistes)の一流に屬し、中に就いて最も主要なる人物はディデローなり。アンシクロペディスト等の文筆と共にまた當時の社會に啓蒙的思想の普及を來たすに與りて力ありしはサロン(Salons)なり、當時の交際社會に輝きたる上流婦人のサロンに於いて當時の名士が相集まりて論談せることは唯だ佛國內に影響を及ぼせるのみならず獨逸に於ける諸侯伯の宮廷よりも人を派して其の報道を求めたる如きことありて其の影響は全歐洲に波及せりといふも不可なきほどなりき。此等の影響によりて佛蘭西の社會は靡然として啓蒙的潮勢に動かされ初めは其の範圍の有識者にのみ止まりしものが後に至りては市人の店頭に於いてさへ唱へらるゝこととなりて終に社會を擧げて一代の流行を成せり。此の時代に現はれ筆を揮るひて社會を動かしたることに於いて勢力の最も大なりしはヺルテール、ディデロー、及びルソーの三人なり。


モンテスキュー及びヺルテール