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Page:Onishihakushizenshu04.djvu/417

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より其の理想を汲み來たれるなりき。而してロックの唱へ出でたる政權三分說は彼れによりて始めて立法、行政及び司法の三部分として言ひ現さるゝこととなれり。盖しモンテスキューの說きたる所は其の根本の思想に於いて特に獨創の見ありといふにはあらざりしも其が歐洲の思想界に及ぼせる影響は頗る大なるものありき。

《ヺルテールの時代觀、宗敎觀及び世界觀。》〔九〕モンテスキューが其の理想的制度を描くや勢ひ當時の制度に對して非難の言を爲す所ありき、されど公然當時の社會制度に對する攻擊を始めて當代の人心を震動せしめたるものはヺルテール(Voltaire 一六九四―一七七八)なり。彼れは其の著 "Lettres sur les Anglais" に於いて其の専ら英吉利より得たる新學術、新宗敎思想及び新社會制度を其の國民の眼前に揭げたりしが、彼れが旨意の此等の新思想を善しとして當時の社會及び社會を支配したる思想と制度とを打擊するに在ること明瞭なりしかば此の書は公然官命を以て燒き棄てられまた其が英國の社會制度に向かひて歎美の情を注ぎたるの故を以て(後にモンテスキューも同じく認められたる如く)多くの國人によりて其の國に忠實ならぬものと認められたり。