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して吾人が信仰の根據にあらず、吾人の之れを信仰するは我が理性を以て其れの十分信ぜらるべき理由を發見すればなり、奇蹟といふ如きものも亦決して不可思議のものにあらず、唯だ神が時に自然の法則をして通常の範圍以外に出でしめたるのみにして通常以外言ひ換ふれば自然以外のことは必ずしも超理のことに非ず。また神の深奧なる性體は吾人の探り得べからざる所なりとするも是れ亦別に奇妙なることにあらず、そは此くの如きは唯だ神のみにあらざればなり、吾人の常に萬物に就きて知る所も亦唯だ其が現はれたる性質に外ならざるなり。之れを要するに唯だ僧侶及び學者が基督敎をして不可思議なるものとならしめたるのみと。トーランドの說く所は當時甚だしく敎會及び有司に嫌惡せられて其の著書の燒き棄てられたるのみならず愛蘭議會の一議員の如きは著者をも燒かむと欲したるほどなりき。
トーランドは後に歐洲大陸に渡りてハンノーフェル朝廷の厚遇を受け、其處にてライブニッツと會せることあり。彼れが一千七百四年に公にしたる『セレーナに贈れる書翰』("Letters to Serena" 是れ即ち普漏士王妃ソフィー、シャルロット Sophie Scharlotte