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Page:Onishihakushizenshu04.djvu/348

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て相離るべきことにあらず、ほしいまゝに己が心を暗まし居る者にあらずば何人と雖も理性の示す所の宗敎を承認せざるを得ざるべしと。ハーバートは其の謂ふ理性の示す所の宗敎の要旨に五箇條ありとて揭げて曰はく、〔第一〕世に至高至大のもの即ち神の存在すること、〔第二〕吾人は其のものを敬ふべきこと、〔第三〕而して敬神の要は德行と相離れざること、〔第四〕吾人はおのづから罪惡を嫌惡し從ひて一切の罪業を悔悟すべきものと知り居ること、〔第五〕神は善にして且つ義なるものなるがゆゑに吾人は自ら行ひたる善惡業に從ひ後生に於いて賞罸せらるべきこと是れ也。ハーバートは件の五箇條を以て如何なる時代の如何なる人民にも凡べて承認せらるべきものとなし而してこれより以外の事は畢竟ずるに僧侶の造り設けたる若しくは哲學者等の附け加へたるものに外ならずと見たり。一言にて云へば、彼れは世に至善至正なる神ありとし而して吾人の神に對する關係を專ら道德的に考へて神に事ふるの要旨は畢竟ずるに德行に在りと見たる也。彼れの唱へたる所是れ已に英國に於けるデイスト等の主張したる根本思想を明示せるもの也。

《英國の自由思想家トーランドの說。》〔五〕第十八世紀に於いて英吉利にデイストの運動を起こしゝ最初の人にし