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Page:Onishihakushizenshu04.djvu/347

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神が示せる行爲の規律に從ふの謂ひにして理論上或宗義を承認するの謂ひにもあらねばまた唯だ道德上の氣質を云ふにもあらずして、神によりて示されたる凡べての戒律を實行するにあり。斯く法律的に宗敎を見たる所是れソシニアン派の主唱に於ける特殊の點なり。

《英吉利に於けるデイズム。ロールド、ハーバートの說。》〔四〕英吉利に於いてデイスト風の思想は十七世紀の前半に於いて已に早くロールド、ハーバート(Lord Herbert 一五八一―一六四八)によりて唱へられたり。彼れは宗敎上吾人の信ずべきことを理性の指示に認め又吾人の行ふべきことを道德上の事柄に認めたり。以爲へらく、萬人には共通なる觀念(notitiae communes)あり而して吾人の思考及び觀察は凡べて此等の根本觀念に從うて始めて其の用を爲すべき者なり、若し吾人の生具したる而して直接に吾人に發見され承認さるゝ其等若干の原理なくば吾人は一切の事物を推究すること能はじ(ロックが生得の觀念を論じたるは一つには此等ハーバート等の所說に對せるなり)然れば則ち吾人の生得したる性能が自然に吾人をして眞理を了解せしめ又善を目的とする道德的行爲に進ましむと云ふべし、而して宗敎てふものは此處に其の基礎を有するなり。理性を有すると宗敎を有するとは決し