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に止まらず數學上の假定を推究して其處に事物の眞實の相を發見せざるべからずと考へたるなり。斯く空間其の物を以て絕對に存在するものと見たる點に於いてニュートンの說は曩にヘンリー、モーアが非物質なる空間の說をなし、廣がりといふことを以て物體の特徵となさずして寧ろ之れを障碍の性に求めたることに合せり。且つ又ニュートンはヘンリー、モーア等のプラトーン學者と共に此の非物質なる空間を以て直ちに神がよりて以て凡べての物を知覺する機關と見たり、換言すれば空間は神の有せる無際限又平等なる感覺器にして神は之れによりて宇宙間の如何なる所に起こる事柄をも直ちに知覺すと考へたるなり。


第四十一章 デイズム

《デイストの宗敎觀、デイストとテイスト。》〔一〕ニュートンの世界觀は彼れに特殊なる新說といふにはあらねど其の彼れが偉大なる自然科學上の硏究に結び附けて說かれたる故を以て英國に於いても又歐洲大陸に於いても大なる影響を時の學問界に與へ而して彼れが此の世界觀はデイズム(deism)と名づくる當時有力なりし一種の宗敎觀の理論的根據をな