Page:Onishihakushizenshu04.djvu/284

提供:Wikisource
このページは校正済みです

吾人の知識の發達するに從ひて其の觀念の浮かび來たるべき條件の具はる時に始めて浮かび來たるものを生得と云はば一切の觀念は等しく生得と云はるべきなりと。ライブニッツは曰はく、實に然り、漸次に發達の條件に從ひて吾人の心識に浮かび來たるといふことは其が本具のものなりといふことと決して相容れざることにあらずと。即ちライブニッツによりては生得といふことがデカルト及び其の繼續者に於けるとは異なる新らしき意味に解せられ、而してロックの非生得說に對して頗る意味深き反對の見解をなせるなり。

予輩は次ぎにロックの創始したる觀念の硏究及びそれに基づける哲學(ideal system)の爾後の發達を叙せむとするに當たり先づロックの立塲よりして當さに引くべき結論を引き出だしたる者として吾人の注意すべきバークレーの哲學に移らむ。


第三十八章 ジョージ、バークレ一

ジョージ、バークレー(George Berkeley)は一千六百八十五年愛蘭に生まる、其の家はもと英吉利より移住せるものなり。ダブリンなるトリニティー、カレッジ