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Page:Onishihakushizenshu04.djvu/264

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は吾人の知識を廣むるものに非ず、此等を唯だ言葉のまゝのverbal or trifling)命題と名づくべし、例へば三角形は三つの角を有する形なりといふが如き是れ也。此等とは異なりて吾人に特に敎ふる所あるreal or instructive)命題あり、例へば三角形の三つの角度の和は二直角に等しといふが如き是れ也。ロックの信ずる所に從へば、凡そ數學上の命題は皆後者の種類に屬するものなり。斯く吾人の智識を廣むる者と唯だ一言語の意味を繰り返すに過ぎざるものとの區別はあれど吾人の智識は凡べてかくの如き命題を以て言語に言ひ表はさる、約言すれば、智識は一觀念が他觀念と合ふか合はざるかを認むるに在りて觀念が觀念ならぬ或物に對する關係にはあらず、即ち智識は觀念相互の關係に存するものにして其が相互の關係の範圍外に出づべきものに非ず。

《直覺的知識、論證的知識及び或然的知識、觀念合不合の關係四種。》〔一四〕觀念の合不合を認めて吾人の正確なる智識を形づくらむには先づ直覺的に明らかなるものを以て基礎とせざるべからず。吾人の觀念を比較して其の合ふか合はざるかの直ちに見定めらるゝもの是れ最も確實なるものにして之れを直覺的知識(intuitive knowledge)と云ふ、其の次ぎに確實なるを論證的知識(demon-