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別種類の觀念を浮かべ來たるなり。

《複雜觀念の三種、狀態、本體及び關係の觀念。》〔八〕斯くして吾人の心は曾て得たる觀念を更に結合し又比較することによりて複雜觀念complex ideas)を形づくり來たる。複雜觀念の形づくらるゝ趣を更に詳しく云へば、一には單純なる觀念を結合すといふこと、次ぎには其等の觀念を比較して其の關係を認むるといふこと、三には其等の觀念を比較して其の幾多のものに通じたる相をば差別の相より分かち離す作用即ち所謂抽象作用によりて形成せらるゝなり。これを要するに複雜觀念は吾人の心が單純觀念を以て造り設けたるものに外ならず。而して其等の複雜觀念を分かちて凡そ三種類となすことを得。一に曰はく、狀態の觀念即ち自立して存在するものにあらずして他の者に於いて始めて存在するものの觀念、二に曰はく本體の觀念即ち種々の性質を具するものとして吾人の想ひ浮かぶるものの觀念、三に曰はく關係の觀念即ち二つの物を比較する所に吾人の想ひ浮かぶるもの、即ち是れなり。

《狀態の觀念、簞純なるものと雜合せるもの。》〔九〕狀態の觀念を區別して簞純なるものと雜合せるものとの二つとなし得べし。單純なる狀態とは其れを成すものが凡べて同樣のものなるを謂ふ。例へ