コンテンツにスキップ

Page:Onishihakushizenshu04.djvu/254

提供:Wikisource
このページは校正済みです

が、それらの心作用を更に委しく述ぶれば、第一に知覺perception)といふ作用あり、是れは吾人が初め感覺によりて觀念を得る時に其の觀念を自ら有し居ることを覺知する所に已に存せり。斯く吾が觀念を知覺するのみならず又其を保存する作用あり、保存retention)の作用とは、第一には浮かび來たれる觀念を引き止めて其が知覺を繼續せしむる作用にして吾人が注意して一事物の觀念を把持し居る即ち是れなり、第二には一旦心に失はれたる(即ち忘れられたる)觀念を再び想ひ起こすことに在り。而して其を再び想ひ起こし而かも其を新たに得たる觀念とせずして曾て已に知覺したりしものとして認むる是れ即ち記憶memory)なり、屢〻想ひ起こすことなくしては一たび得たる觀念も總じておのづから朦朧となりゆくものなり。次ぎに吾人は觀念の異同を差別する心作用を有す。次ぎにまた一觀念と他觀念とを差別するのみならず種々の觀念を比較して其の間の關係を認むる心作用あり。次ぎには又幾多の觀念を結合せしむる心作用あり。然れども此等諸〻の心作用は最初外官より得たる觀念に依りて存するものにして其等の觀念なくして起こり得るものにあらず、されど其等の作用を自覺する所に吾人はおのづから