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Page:Onishihakushizenshu04.djvu/253

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トの唱へたる所と同趣意なるが、但だデカルトは廣袤のみを物體其の物に屬する性質なりと見、ロックは之れに加ふるに空間を塡充する性を以てせり。〔ヘンリー、モーアは已に質礙の性(impenetrability)を以てデカルトが謂はゆる物體の性に加へざるべからずと說けり。〕ロックはかくの如く物體の性と云はるべきものに二つの區別をなし、スコラ哲學者の已に用ゐたる、又ロックと相知れるロバート、ボイル(Robert Boile)も已に用ゐたる語を襲用して物體其の物に屬するものを第一性質primary qualities)と名づけ、吾人の感覺する所にのみ存するものを第二性質secondary qualities)と名づけたり。茲に第二性質と名づくるものは其れを以て直ちに物體其のものに屬せりといふを得ざれども唯だ其等の感覺を吾人の心に起こすべき力が物體に具はれりといふを得べし、尙ほ委しく云へば、物體の第一性質即ち其を組織する分子の大さ、數及び運動等によりて吾人の心に色、音、香、味等の觀念を起こす力が物體に具はれりといふを得べし。

《內官よりする觀念(知覺、保存、記憶等の心作用)。》〔七〕上に說けるが如く內官よりする觀念は畢竟吾人の心作用(而して其の作用は感覺によりて得たる觀念を用ゐるもの)を自ら覺知する所に起こるものなる