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動には絕對の增減なし、それが一部分に沒すれば他部分に現はる。斯く運動に絕對の增減なしと云ふことより運動の三法則を演繹するを得。其の法則の一は一物體が一狀態に在らば常に其の狀態を保存すと云ふこと、即ち惰性(inertia)の法則と名づくるもの也、其の二は物體の動くや他物によりて妨げられざる限りは直線を取ると云ふこと、其の三は運動する物體が他物に觸るれば之れに運動を傳ふと云ふこと、是れなり。(デカルトは一物が他物に運動を傳ふる法則を更に委しく說明せむと試みたり。)

《物體の三種類と其の循環運動。》〔一二〕物界の構造は唯だ物體と其の運動とによりて說明し得べし、詳言すれば、物體が神によりて動かさると見たる上は唯だ其の運動によりて自然に物界の形づくらるゝことを說明し得べし。上にも云へるが如く、物體の本性は廣袤といふことなるを以て之れを種々に區劃すれば種々の異なる形の物體を成すべく、又如何ほども小さくそを區劃することを得べし。故に分かつ可からざる物質元子即ちアトムと謂ふべきもの無し。物體を分かちて三種類となす。第一は比較的に分量の大なるもの、換言すれば、比較的に大きく區劃されたるものにして是れ即