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Page:Onishihakushizenshu03.djvu/88

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に入るを得ず、常に新しき水流れ來たるがゆゑ也」と。

《變化生滅は如何にして生ずるか。》〔四〕如何なれば萬物はかく絕えず變化生滅する、その變化は何處より來たる。ヘーラクライトスおもへらく、これ物には反對の傾向の常に働けるがゆゑなりと。反對の流行あるが故に變化あり。變化あるが故に萬物生ず。萬物の生滅して片時も靜止停息せざるは反對のものの相爭へば也。爭ありて活動あり、反對ありて物は一致調和の狀態を保つ。一方に死なくば爭で他方に生あるを得む。反對の一致是れ即ち萬物生存の原理なり。この故にヘーラクライトスは「ホメーロスが神並びに人の間に爭の熄まむことを欲せしは不可なり、彼れは宇宙の滅亡せむことを願へるを知らざりし也、もしホメーロスの祈願の聽かれたらむには萬物は消え去ることとならむ」といへり。彼れはまた「爭は萬物の父、萬物の王なり」「物を結ぶものは反對なり」「神は晝又夜也、夏又冬也、戰又和也、飽又餓也」といへり。又此の反對の釣合を「隱れたる調和」ともいへり。「世人は相異なれる方角に引かるゝものの相和することを知らず、世界の調和ある構造は反對の緊張に懸かりて存す、譬へば弓又琴の構造の如し」。