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Page:Onishihakushizenshu03.djvu/85

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め得るか、是れ解釋を要する問題也。思ふにクセノファネースは未だ明瞭に此の問題を思ひ浮かべずして唯だおほらかに神は唯一不動の者なり而してこれは全世界に外ならず萬有の全體即ち一體なりと考ふるに止まりしならむ。而も斯く考ふれば其の處るところ既にミレートス派の立脚地とは同じからず、ミレートス派は一元あり而して此れより世界を生ずと說きクセノファネースは世界即一體と說きし也。こゝに後にエレア學說を喚起すべき問題の伏在せるなり。


第四章 ヘーラクライトス(Ἡράκλειτος

《ヘーラクライトスの學說の要點。》〔一〕ミレートス學派の主眼とする所は一物素の變化と見て萬物の生起を說かんとするにありしが、其の一元說はクセノファネースに在りては全世界即ち常住不動の神なりと云ふ思想に變じたり。若し彼れの說く如く萬有は一元一體にして而して其の一元一體が不動ならば現に世界に見る所の變動を如何にせむ。世界に於ける變動を沒せざらむがために、萬物は詮ずる所一にてありながら其の一の絕えず變々化々する所以を說明せむとしたりしはヘーラクライトスなり。彼