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ず。唯だ彼れがたしかに說きたりと思はるゝは輪廻轉生の說あるのみ。但しこれは彼れに始まれるにはあらで已に其の以前にありて多少希臘人の間に行はれたりし思想なり。惟ふにピタゴラスは輸廻轉生の說をば善惡應報の說と相關せしめて之れをその宗敎的敎說の要點となしゝならむ。又當時旣に詩人等に唱へられたる多少進步したる一神敎的思想をも或は交へたらむと思はる。
後にピタゴラス派の學說に見ゆる二元的思想は早く已に其の學徒の間に唱へられたるが如し。又此の學徒の夙に音樂及び數學を修めたりしことが其の世界觀に多少の影響を及ぼしたる所ありしならむといふは全く根據なき想像にあらざるべし。かゝる起原を有するピタゴラス學徒の思想が一派の哲學として如何なる形を成すに至りしかは後に開陳すべし。
第三章 宗敎と學術との衝突
クセノファネース(Ξενοφάνης)
《クセノファネースと俗間の宗敎。》〔一〕前章ピタゴラスに於いて當時の宗敎的運動の實際的方面にあらはれた