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Page:Onishihakushizenshu03.djvu/69

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別せざりしが如し。

《何故に空氣は萬物の本原なるか。》〔十四〕何を據りどころとして彼れは空氣を萬物の本原となしゝか。彼れが書中の句として傳はれる語に曰はく、「恰も空氣が吾人の生氣として吾人を保つが如く全世界も亦息氣いきにより空氣によりて保たる」と。これに由りて考ふれば彼れは空氣に一種の生活の氣ありとなし吾人がこれに包圍せられこれを呼吸して生存する如くに全世界も亦これによりて存在すと考へたりしならむ。かく彼れが生物に見たる所を天地萬物に移して觀じたるはまさしく彼れがアナクシマンドロスの說をば一層明らかに眼前に描き出ださむと力めし結果なるべし、又こゝに至りてタレース及びアナクシマンドロスの取れりきと察せらるゝ物活說が一際明瞭になりたりと云ふを得べし。

《諸物は如何にして空氣より出づるか。》〔十五〕諸物は如何にして空氣より生じ出づるか。アナクシマンドロスは只だ反對のものが分離し出づと說くに止まりしがアナクシメネースは一步を進めて空氣の活勸によりて之れに厚薄を生じ而してこれが厚薄を生ずることによりて千種萬態の諸物を成すと說きたり。おもへらく空氣の厚く濃くなるは即ち寒く