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Page:Onishihakushizenshu03.djvu/70

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冷かになる也、其の薄くなるは即ち暖かになるなりと。看るべしアナクシマンドロスの所謂寒暖二氣の反對をもアナクシメネースはただ同一物(空氣)の或は濃く或は薄くなる作用に歸したることを。而して薄くなれば空氣は火と變じ、濃くなれば凝りて風となり、更に凝りて雲霧となり、次ぎに水となり、地となり、又石となる。これ一物素より如何にして諸物の生ぜしかをタレースよりも又アナクシマンドロスよりも更に明らかに說き出でたるもの也。

《其の宇宙構造說。》〔十六〕アナクシメネースは宇宙の構造を說いて曰はく、大地先づ成り、地より蒸發する氣愈〻溥くなりて火となり此の火廻轉するにつれて天體となれり。大地は扁平なること盆の如く甚だ廣きが故に空氣に支へられて動かず、天體は同じく空氣に浮かびて大地を左右に廻轉す、恰も帽子の頭の周圍を上下に廻轉せずして左右に廻轉するが如し、日輪の夜に見えざるは地下を行くが故にあらず大地の北方の高き故にこれに隱るゝ也と。又アナクシメネースが世界の成壞循環することと數多の世界の存在することとを說きたらむと思はるゝはアナクシマンドロスの之れを說きたらむと思はるゝに同じ。