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イロンを說き(二)この無際限なる本原よりまづ性質上反對のものの分離し出で而してその反對のものの作用によりて萬物を成すといひ(三)また世界の無窮に出沒して歇む時なきをいへり。此の循環說を唱へたるは天地萬物に絕對の始めのあることを考へ難しと見しが故ならむ。

ト、アパイロンより反對の性質分かれ出づといふのみにて其の如何にして然るかの說明はアナクシマンドロスにありては見ることを得ず。而してこの「如何にして然るか」を說明することに一步を進めたるは次ぎに出でたるアナクシメネースなり。


アナクシメネース(Ἀναξιμένης

《アナクシメネース、其の生涯、著述。》〔十二〕このミレートス派第三の哲學者も前二人と同じき市府の生まれにして古來の所傅によればアナクシマンドロスの弟子なりきといふ。縱令然らざりきとするも其の學說の影響を受けたりしは明らかなり。生死の年月定かならねど槪ね西曆紀元前五百八十八年より五百二十四年に至る間に生存せし人ならむ。イオニアの方言にて一書を著はしゝが一小句の外今は全く傳はらず、これをもペ