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Page:Onishihakushizenshu03.djvu/424

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だ希臘羅馬の文物を了解すること能はざりしが故に彼等は其の遺物の文學上のものたると美術上のものたるとに論なく悉く之れを破壞して惜しむ所なかりしが此の時に方たりて彼等野蠻人を懷け得しもの唯だ當時の宗敎的勢力ありしのみ。アウグスティーヌスの思想によりて基礎を堅且つ大にしたる羅馬敎會の大組織、其の大宗敎的勢力にして始めて能く彼等蠻人を敎化し遂に彼等をして希臘羅馬の文化を了解するに至らしめしなり。希臘羅馬の文化の遺物を傅へて彼等に手渡したる功績は專ら敎會に歸せざるべからず。一言にして云へば此の時に方たり古代の文藝は寺院に其の隱家を發見せるなり。中世紀に在りて文事は勿論產業の事に至るまで凡そ社會の事業に於いて指導者となりしものは羅馬敎會の僧侶なり、彼等は當代の智識の倉庫たりしなり。


第二十三章 スコラ哲學總論

《スコラ哲學の目的、信仰と道理との一致。》〔一〕基督敎會の敎理は敎父時代に於いて略〻其の形を成し而して敎理を形づくらむが爲めには主として希臘哲學を用ゐたりしが哲學と宗敎、道理と信仰との