Page:Onishihakushizenshu03.djvu/273

提供:Wikisource
このページは校正済みです

ども彼れは大に古來所傳の神話のうち德を亂す傾向あるものを排斥し從ひて此くの如き神話を歌ふ詩人を國家より放逐すべしと說けり。

《老後の著作『ノモイ』。》〔三一〕プラトーンが老後の著作なる『ノモイ』(法律)に於いて彼れが國家論は其のイデア論と共に大に改造せられ、成るべく實際に近きものとせられたると共にまた頗る折衷的のものとなり、君主獨裁政治、貴族政治、共和政治等の諸要素を其の中に混じ入れたり。但し此の對話篇に說ける所は整然たる組織を成せるものにあらず。此の篇恐らくは未定稿のものなりしならむ。


プラトーンの門弟

《プラトーンの門弟、古アカデミー。》〔三二〕プラトーンが子弟を集めたるギムナジオンの名に因みて彼れが學派をアカデミーと名づく。而してアカデミーの初期(即ちプラトーンの死後凡そ百年間許りの間)を古アカデミーと名づく。此の間此の派の學者は師說以外に特に新たに開拓せる所なく又其の師說を繼承せりと云ふもおもに彼れが晩年の思想即ちピタゴラス學派の影響を受けたるものを紹げるなり。彼等が多少獨立に硏