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Page:Onishihakushizenshu03.djvu/270

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農工商なり。統治權を有する者は知見を具へ諸〻の事理に通曉せる者ならざるべからず、プラトーンの語を假れば彼等は哲學者ならざるべからず。哲人王位に在りて其の國始めて治まるべし。プラトーンが理想的國家は最優者が他を支配する國家なり。彼れは右云ふ各階級の特殊の德を其の倫理說に結びて曰はく、治者に要する特殊の德は智なり(心の性能中理性の德に當たる)、役人及び武人の德は勇にあり即ち國家のために其の職に徇ずるに在り(氣慨の德に當たる)、農工商の德は節制、即ち各〻其の業を守りて界限を超えざるに在り(物欲の德に當たる)と。

《其の敎育說。》〔二九〕プラトーンは其の國家論に基づいて大に敎育を重んじ、國家が國家のために敎有を施すべきことを說けり。然れども彼れの謂ふ敎育は上なる二階級に止まりて農工商の最下級に及ぶものに非ず。說いて曰はく、上なる二階級に屬するものは幼少より國家の學校に入りて精神及び身體の修養鍛練に從事せざるべからず。體育のためには體操を勵み精神を養ふには先づ德を立つるに益ある神話、詩歌、音樂、數學等を學ばしめ漸次哲學に入らしむべし。此の二階級は譬へば一大家族の如きものにして各人の私產を有するを許さず。結婚も各人の自由に