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Page:Onishihakushizenshu03.djvu/263

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バンドの云へる如く)其の哲學の他の部分と相等しき位置を有せずして寧ろ其の附屬物たるが如き觀あり。ヸンデルバンドが之れをパルメ二デースの假設的物理論に比したるも全く理りなきことに非ず。蓋しプラトーンが哲學の動機は物理的硏究に在らずして寧ろソークラテースを繼承したる知識及び倫理の硏究に存するがゆゑにそが知識論の結果として成り上がれるイデア論及びそが學說全體の究極の目的ともいふべき倫理說は彼れが哲學の骨髓を成せるものなりと謂うて可ならむ。彼れが哲學の價値は到底そが物理論の方面に存せざるなり。


倫理說

《プラトーンの倫理說、靈魂と肉體。》〔二三〕プラトーンに從へば吾人の靈魂は生以前より存し死以後に於いても亦滅することなし、現世の生活は此の靈魂の肉體に宿れる也。蓋し彼れが靈魂の過去存在を說けるは其の由來そが知識論にあり。彼れ云へらく、イデアの知識は吾人に取りて全く新しきものを得るにあらずして吾人の本來有せしを再び想ひ起こすにありと。彼れが吾人の靈魂は現身に宿る以前に肉體に蔽はれざる狀態に