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Page:Onishihakushizenshu03.djvu/246

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言すればイデアは感覺以上の者、形體ならぬ者、個々物をして一種類を爲さしむるもの即ちそれに遍通なるもの、統一的のもの、常住不變のものなり又個物の多なるに對して一なるもの(μονάς)なれどエレア派のいふが如き抽象的の一にあらず事物の種類の相異なるは相異なるイデアあればなり。而してイデアの相互の關係は前に云へる槪念の關係を成り立たしむる模型なり、即ち同列と上下との關係を保ちて、同列のイデアは相互に自他の關係を爲し各〻自らに對しては他に對しては非有なり盖し各イデアは自存する實有のものなれど同列にある他のイデアにあらざれば也。而して吾人が知識を形づくるに於いて一槪念と他の槪念との相結ばるゝ所以は盖し下なるイデアは上なるイデアに從屬してそれに統括せらるればなり。故に二個の槪念を繫ぎて彼れは此れなりと云ひ得る也例へば動物又植物は生物なりと云ひ得るが如し。かくの如く同列のものは互に自他の關係を爲し上下のものは下が上に屬しこれに與かるによりて存在するの關係を爲せる是れ即ちイデアの組織にしてかゝる組織を有するイデア界是れ即ち實體の界なり。