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にはあらず、知識論、理體論、倫理論等の問題は槪ね相纏うて一篇の中に入れり。凡そ彼れの對話篇はもと彼れが同志の輩と共に論談せし所を骨子として成れるものなるが如し。其の多くはソークラテースを立てゝ主人公となせり盖し槪ね其の口を假りてプラトーンが自說を吐露せるなり。故に對話篇に現はれたるソークラテースを以て直ちに歷史上の彼れとなす可からず。中には固より眞にソークラテースに關する歷史上の事實と見て可なるが如く思はるゝふしもあれど何れが眞にソークラテースの云爲にして何れがプラトーンの醇化なるかは容易に辯別し難し。

プラトーンの著作として傳はれるもの多きが中に彼れ自身の作ならずと思はるゝもの亦少なからず。何れが彼れの眞正の作にして何れが然らざるかは古來プラトーンを硏究する者に取りての一の肝要なる問題たり。今日まで史家の考證せる所により眞作と見るべきものを揭ぐれば、『プロータゴラス』(Πρωταγόρας)、『ゴルギアス』(Γοργίας)、『テアイテートス』(Θεαίτητος)、『ファイドロス』(Φαῖδρος)、『シムポジオン』(Συμπόσιον)、『ファイドーン』(Φαίδων)、『ポリタイア』(Πολιτεία 國家論)、『ティマイオス』(Τίμαιος)、以上は疑