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Page:Onishihakushizenshu03.djvu/234

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ひを容れざるもの、また『アポロギア』(Απολογία 辯護)、『クリトーン』(Κρίτων)、『フィレーボス』(Φίληβος)、『ノモイ』(Νόμοι 法律)等も眞作と見て可なるべしと思はるゝもの、次ぎに多少の疑ひを挿み得るは『ソフィスト』、『ポリティコス』、『パルメニデース』、其の他『クラティロス』、『メノーン』、『オイティデーモス』、『クリティアス』、『小ヒッピアス』、『オイティフロン』、『リシス』、『カルミデース』、『ラケース』等なり。此等は或はプラトーンの自作とは云ふべからずとも尙ほ槪ね彼れが思想を寫したるものと見て可なるべし若し彼れの筆に成れりしにあらずば其の學徒の中に出でたることは疑ふべからず。此等多少の疑ひを挿み得る部類の中最初に揭げたる『ソフィスト』『ポリティコス』『パルメニデース』の三つは彼れが哲學思想と其の變遷發達の趣とを窺ふに頗る肝要なるものなるを以て其の眞僞に就きては學者間紛々たる議論あり。

《著作の順序。》〔三〕彼れが著作の順序も亦プラトーン硏究者間に存する一要問題なり盖しそが年代の順序は彼れが哲學の成立を知るに大なる關係を有すればなり。或はプラトーンの著作を見て豫め計畫を立てゝ一の完備せる思想を叙せる者なりと爲すありシュライエルマヘルの如き是れなり。されど此の見解の根據を缺けるこ