コンテンツにスキップ

Page:Onishihakushizenshu03.djvu/144

提供:Wikisource
このページは校正済みです

なり。尙ほ此の派の學者が其の數論を廣く諸般の事物に應用せむとしては勢ひ牽强附會の說に陷らざるを得ざりき。彼等おもへらく、一より四までは形體の數、五は形體の有する性質の數、六は生氣の數、七は健康理解の數、八は仁愛、友誼、知慧、發明の數、九は正義の數、十は宇宙の調和を保つ數なりと。

《世界構造說。》〔六〕ピタゴラス學徒の世界構造の說に曰はく、世界の太初に太一あり、之れを圍繞してト、アパイロン(無定限)あり、此の太一がト、アパイロンに働き漸次に其の範圍を蠶食してこれに定形を附與し遂に此の有形なる世界萬物を形づくるに至りしなりと。彼等は定と不定との對峙をこゝに應用して不定(ト、アパイロン)を虛空と見、此の虛空に形を與ふると見做したり。詳言すれぱ此の世界の外圍には無限の不定なる虛空あり、世界の中央に位する太一は此の空漠たる虛空を引き入れてこれに形を與へ斯くして此の世界は成れり。アリストテレースがピタゴラス學徒の謂ふト、アパイロンに就いて記せる語に曰はく、世界は之れより虛空と氣息いきと時間とを吸ひ込む、これらはト、アパイロンより出でて世界に入り込む、世界はト、アパイロンより吸ひ込む如くに又これへ吹き返すなりと。其の謂ふこゝろ