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るが其の諸數には奇數偶數との二種あり。而してピタゴラス學徒は奇數をまれるもの、偶數を不定のものと見、萬物は皆此のと、即ち不定との對峙によりて成ると考へたり。

定と不定との反對は萬物を貫通するものなるが故にこれを根本として世界に幾多の對峙を生ず。或ピタゴラス學徒は此等の對峙を數へて十種となせり、(一)定不定(二)奇偶(三)一多(四)右左(五)男女(六)靜動(七)直曲(八)明暗(九)善惡(十)方形長方形、是れなり。定は不定に、奇は偶にまされり。

《數論とその應用。》〔五〕此の派の學者は特別に一より十に至るの數に重きを置き、就中一、二、三、四を貴びたり、そは此の最初の四つを相合すれば十となればなり。

諸形體を特殊の數にあてはむれば點は一、線は二、平面は三、立體は四なり。さるは點は分かつべからざる單一のもの、線は二個の點に界限せられて成るもの、三個の線もて圍みて始めて平面を成し、四個の平面(三角面)もて圍みて始めて立體を成せば也。一より四に至るの數を合して完全なる數即ち十を成すが如く點、線、面、體の四種を以て諸形體を成す。究竟すれば立體も平面も線も皆點を以て成れるもの