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Page:Onishihakushizenshu03.djvu/134

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と同じく專ら機械的說明を用ゐたり。又ヌウスは或物には存在し或物には存在せずといひ、又其の存在する處にも或は多量にあり或は少量にありといへるを見れば彼れは之れを以て個々に分割さるゝもの、其の量に於いて大に小に分かたるゝものと爲せるなり。且つ又之れを諸物中の最精最純なるものと云へりしこと等を以て察するも其の謂ふ所の尙ほ全く非物質のものを指せるにあらざるを知るべし。即ち彼れが思想は未だ全く物理學派の立脚地を超脫せるものにあらず。さもあれ彼れがヌウスを說き之れを以て他物と全く相混淆せず純乎たる獨自の存在を有するものとしたりしは物界硏究時代の物理家中最も非物質なる精神を說くに近づけるものなりと云ふを得べし。

《天體論。》〔五〕アナクサゴーラスは所謂ヌウスを以て天地の秩序を說明するに缺くべからざるものとなせども其の實際之れを用ゐたるは專ら最初の運動の起こる所以を說かむが爲めにして一旦運動の起こりし後は機械的作用によりておのづから天地の形成せらるゝが如くに說きたり。太初宇宙は諸種子の雜糅せる狀態にありしがヌウス一たび旋動を起こし此の旋動恰も漣漪の水面に擴がるが如く漸