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し種子の出現すれば也。故にアナクサゴーラスの有名なる語あり、曰はく「雪も黑し」と。又曰はく「凡べてより凡べてが來たる」と、そは凡べてが凡べての種子を含めばなり。然れども今現に一物に含まれたる各種の種子の量は固より同一なりといふべからず。物はその含める種子の中最も多きもの、隨うて又最もいちじるく露はるゝものによりて名づけらる。
右はアナクサゴーラスが凡べてのもの凡べての部分を含むといへるを諸物が各種の種子を含めるの意に解しての說明なるが、或史家は之れを解して各種子に寒熱等反對の性質の多少皆含まるといふ意とす、即ち一種子として全く寒又は全く熱なるはなし、寒と熱とは全くは相離れず、而も無數の反對の性質の各種子に含まるゝ割合の同一ならずして或は寒を多く或は熱を多く含むが故に甲の種子乙の種子といふが如き性質上の差別を生ずと解する也。
《種子の根本動力はヌウスなり。》〔四〕太初一切の種子の相混入せりしものが如何にして分かれそめたるか。アナクサゴーラスはエムペドクレースと同じく動かさるゝ種子の外に動かすものを說きて之れをヌウス(νοῦς)即ち精神と名づけたり。謂ふ所ヌウスとは何ぞ。