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べからず。さればエムペドクレースの所謂本來有差別の元素の說をして上述の困難より免れしめむには遂に幾分の量を存しながら尙ほ其の上には分割すべからざる極微體(即ち限りなく混和せざる又離散せざる元子)ありと說かざるべからず。又離合即ち運動のあり得べきために虛空の存在をも說かざるべからず。されどエムペドクレースは未だ此に說き至らざりしなり。
又彼れの說くが如く地水火風の四元素のみをもて能く森羅萬象の生起を說明し得べきかとも疑ひ問ふを得べし。宇宙に存する千萬無量の性質上の差別が如何にして唯だ四種の元素より生ずるか。エムペドクレースは唯だ四種の元素が離合すと說くのみ其の離合が何故にかゝる性質上無數の差別ある物を生じ來たるかを說かざる也。此の點に關してエムペドクレースとは異なる而も其の根本的思想に於いては相類似せる說を立てしはアナクサゴーラスなり。
第七章 アナクサゴーラス(Ἀναξαγόρας)
エムペドクレースと略〻同じ時代に出でて同じ問題を解釋せむとしたる