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漸次に增し而して其の離散の極に達したる後更にスファイロスへ向かひゆく時には愛次第に增して憎次第に減ず。斯くして全物界は件の兩極端にある時期と其の一より他へ往還する時期との四時代を經過す。全物界は無窮に此の四つの時代を循環來往す。吾人が今現に睹るが如き個々物の存在は一極端より他極端へ移りゆく時期に於いてのみあり。兩極端に於いては全き一致又は離散の專領する時代なれば今睹るが如き個物の存せむやうなし。個物の存せむには必ずや多少の混和と多少の離散となかるべからず。即ち一個物たらむには其の物が他物に對して離散せざるべからず、然れども其の物の一個物たるを得むには又若干の元素相集合して一團の自體を爲さざるべからず。或史家はおもへらく、エムペドクレースが離散と相消長すといへる和合は同種類の元素の相寄るを云へるにあらず異種の元素の相集まるを云へる也、愛の力によらずとも同種の元素は相集まる、唯だ異種の元素の和合するは愛の力による、此の故にスファイロスに對する極端の狀態にありては同種の元素はそれぞれに皆悉く相合する也と。斯く解釋したる方エムペドクレースの說には困難の點少なからむ。又史家通常の解釋に從へ