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の說を解してこれを地水火風及び愛憎の六元素によりて萬物を組成すと見るの意なりと云ひしもあり。然れども愛憎を地水火風と列べて之れを六元素と見るは彼れの意にあらざるべし。彼れに於いては未だ勢力といふ觀念が明瞭ならざれども兎に角動かさるゝ四種の物質元素と之れを動かす二個のものとの區別が彼れの說に現はれたることは見まがふべくもあらず。
《全世界の循環。》〔四〕此くの如く諸元素は愛と憎とによりて或は混和し或は離散するものなるが其の混和する傾と離散する傾とは常に平均するものに非ず。世界全體より見れば一が增進しつゝある時他が減却しつゝありて遂には一が全く他を壓倒して全物界を橫領するの時期あり。愛が全物界を橫領する時は諸元素悉く一致結合して些の分離なし。而して此の時に於いては全物界は渾然たる球體を成すと見てエムペドクレースは之れをスファイロス(σφαῖρος)即ち球と名づけたり。これに反して憎が全く愛を壓倒する時は諸元素悉く相離れて其の中些の和合なし。此の兩極端の中間に在る時期には和合の傾と離散の傾とが交〻相消長す。物界がスファイロスの狀態を出でて他の極端に向かひゆく時には愛が漸次に衰へ憎が漸