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Page:Onishihakushizenshu03.djvu/115

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幾多の元素の或は混和し或は離散するに外ならずと。其の混和するは物の成る也、其の離散するは物の壞るゝ也。彼れの語に曰はく「一物として生滅するものなし唯だ混和することあるのみ又混和したる者の離散するあることのみ、然るに人は之れを名づけて生滅といふ」と。斯くエムペドクレースは不生滅不變化なる者の混和離散するを以て萬象の生滅變化する所以の理を說明せまく試みたり。元素といふ觀念(即ち生ぜず滅せずして唯だ機械的に離合するものといふ觀念)が彼れに於いて始めて現はれたり。彼れは之れを「諸物の根」と名づけたり。又此の「諸物の根」即ち元素を地水火風の四種と見定めたるも彼れを以て嚆矢とす。〈アリストテレース更に元素を此の四種に定めし以來久しき間此の四元素說の行はれたりしは怡も五行說の支那の學者間に於ける、四大の說の印度の學者間に於けるが如し。〉彼れは萬物の皆この四元素の離合によりて成ることを譬へて恰も畫工が繪具を混じて物象を描くが如しといへり。タレース等已に此等の物質の一を揀び之れを以て萬象の說明を試みたれど彼等の說きし所は其の一物質が變化してよろづの物を生ずといふにあれば其の所謂元素說にあらざるは論なし。アリストテレースに據ればエムペドクレースは地水風の三元素を一括して之れを火に對せしめたり