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乏し。

宇宙は相重なれる球層を以て成り中央に核ともいふべき球あり(この球は葢し吾人の住する地球を指していへるならむ)。此の球と宇宙の外皮たる極端の球層とは重くして光なき暗質より成り而して此の外皮の兩側と其の核の外側とを取り卷きて火層あり。此の兩火層の中間に火質と暗質との相混ぜる幾層の球あり、云々。

右の二元的物理說並びに世界構造說はまさしく當時のピタゴラス派の學說を取りこを最もよく俗見を代表したるものとしてパルメニデースの述べたるものなりと考ふる史家あり。或は然らむ。

尙ほパルメニデースは知覺を說明して曰はく、吾人の知覺は身體を組織する明暗二元の配合如何により敏とも鈍ともなる也。暖にして明なるほど知力生氣旺に、寒にして暗なるほど知力生氣微し。又吾人が外物を知覺するは吾人の身體を組織する明暗の二元が各〻みづからと同質なる物を知覺するなり、即ち明なるものが外界の明なる質、暗なるものが外界の暗なる質を知覺するなりと。