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Page:Onishihakushizenshu03.djvu/101

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《實體的觀念の最始の發現。》〔六〕パルメニデースの根本思想は實に有るもの即ちは生滅變化するものにあらずとして一切の差別變化を否み以て實體論に眼を向けたるの點にあり。ミレートス學派は一なるものが變化して萬物をなすといへりしがパルメニデースは一なるものの變化すべき理なし實體は決して生滅せずと說きたる也。しかも其の謂ふ有は未だ純理的のものにあらずして、寧ろ物體的のものなりき。遮莫、實體的觀念はパルメニデースに至りて始めて現はれ後の希臘哲學の發達に大關係を有するものとなれり。パルメニデースの銳利なる辯證的論法を紹ぎて更に變化生滅といふ思想を打滅することに力めたる者を彼れの弟子ヅェーノーンとす。ヅェーノーンは師の說を開發せむと力めしよりも(これは實際更に開發するの餘地なかりしなり)むしろ其の反對論即ち雜多變動を實有のものとする論を攻擊論駁する位置に立ちたり。


ヅェーノーン(Ζήνων

《ヅェーノーンの辨證法。》〔七〕ヅェーノーンはパルメニデースの高足弟子、師と同鄕の人なり。プラトー