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  • 近來、金の相場は如何ですか。[1]
  • 先づ矢張昻るばかりで、下りますまい。[2]
  • 先頃は金の値段の少し下落したさうではありませぬか。
  • 先頃下落しましたのは僅かです、此頃又昻りました。
  • 私の考へでは、金の値段が下落するとゆうことは、何うしても困難だらうと思ひます。
  • 左樣です、當時は各國共都て金を用ゐる國が多くて、銀の用途は大變狹い、[3]其故銀の値段はどうしても容易に昻りませぬ。[4]
  • 若も世界の各國が都て金を使用したならば彼の銀といふものは無用の物になりはしますまいか。
  • つまり銀では彼の五十錢の銀貨や、十錢二十錢の貨幣を鑄するばかりです。[5]
  • 只銀では其等の貨幣のみを造るとしたならば、其の用途はほんの狹いものですな。
  • 全く左樣です。
  1. 行市
    相場
  2. 騰貴
    下落
  3. 用項
    用途
    太窄
    甚ダ狹キ
  4. 往上長
    騰貴スル
  5. 十錢ナリ

第五章

  • 私の二人の友人が、數部の會話書を買ひたいと言つて居りますが、[1]私は天津に有るか、又は上海に有るか知らないのです、私が思ひますに、汝は屹度何處にあるか御存じでせう、どうか私に御話し下さい、私は手紙を認めて友人に買つて吳れるやうに言つて遣るに好都合ですから。[2]
  • 汝支那語の會話書を御買ひになりたいのならば、何も面倒なことはありませぬ、汝は手紙を天津や上海に送つて御友達に賴んで御尋合せになるに及びませぬ、その支那語の會話の書物は、日本の東京の神田區や本鄉區の彼の多くの本屋には皆有ります、東京の方には慥な友人がありますから、[3]私は手紙を書いて友人に近頃新に出來た必要な會話書を汝の爲に數部買つて送つて吳れるやうに賴んで遣りませう、一層手數が省けて確かではありませぬか。[4]
  • 其はまあ寔に結構です、[5]只汝に御厄介を掛けまして、[6]私は真に相濟みませぬ。
  • これ位の事が何ですか、何も面倒な事は有りませぬ。
  • それでは、其の本代はどう致しませうか。
  • それは急ぎませぬ、書物を送越す時に屹度書付を寄越しますから、[7]何程であるか値段が知れます、其の上で汝は私に御渡し下さい而して送つて遣るが宜いではありませぬか。
  • 左樣ですか、それでは仰に從つて置きます。
  1. 話條子
    會話書
  2. 寫信
    手紙ヲ書ク
  3. 靠得住
    恃ミニナル、信賴スベキ
  4. 省事
    手數ヲ省ク
  5. 敢自
    マア本當ニノ意、寔ニ也
  6. 勞動您
    君ヲ煩ス
  7. 寄來
    送リ來ル
    開帳
    仕切書ヲ出ス