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第六章

  • 私は来月一度日本へ往かうと思ひます、又私共の学校に印刷機械を買入れたいので、[1]買入方を頼まれました、私は今度初めて彼処アチラに参りますので、[2]人情地理共不案内で、[3]其の上言語も通じませぬ、若も彼処に堅い御友達がありますならば、どうか紹介状を一封御認め下さいまして、私の世話を頼んで遣つて下さいませぬか。[4]
  • 好しい、私は一人至つて心易い友人が有ります、其の人は東京本郷区で一軒の書林を開いて、専ら漢籍を買つて居ます、汝東京へ御出になりましたならば、印刷機械買入の事を其の人に御相談なさいませ。
  • 左様致しませう、其の人の店に印刷機械も買つて居ますか。
  • 其の人の店には印刷機械は買つて居ませぬが、併し私は其の人が買入の事を扱ひ得ると信じます、[5]只此ばかりでなくたとへ他の事でも其の人は扱ひ得ます、物事に明い人で各商店とも皆連絡を有して居ますから、[6]何事も其の人に御頼みになるが一番大丈夫です。
  • 至極好い都合です、其の御友達は吾々共の国の話は解りますか。
  • 其の人は丸で北京語です、当時日本の商人中でも、其の人の北京語は、一二に数へられます。
  • 其は真に愉快です、左様な人を得るのは何といふ仕合でせう、どうか汝一封御懇書を御認め下さいませ。
  • 一切承知しました。
  1. 印字的機器
    印刷機械
  2. 那麽
    彼処、彼方
  3. 人地生疎
    一切不案内
  4. 照應
    世話
  5. 能辦
    辦ジ得フ
  6. 精明
    聡明、利口
    不但
    啻ニ………バカリデナク
    聯屬
    聯絡

第七章

  • 汝の彼の店は譲受られて、何故屋号を換へられないのか。
  • 私の彼の店は譲受けたのではありませぬ、借受けたのです、何うして屋号を改められませう。
  • 誰に借られたのか。
  • 矢張私の或る心易い人の店です。
  • 何故元の主人は商売をせずに店を汝に貸したのだらうか。
  • 全く元の主人は好い事が有つて他処に行き、家には商売を管理する人がないものですから、そこで私に貸して呉れたのです。
  • 御借りになつたのは幾年と取極められたのか。
  • 五年間の契約です。
  • 何故汝其の時に、其の人と相談をして譲受られなかつたのか。
  • 私は其の当時、其の人の口振を探つて見ましたが、彼は譲渡すことを承知せぬやう