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 皇帝の國務上の大權を輔弼し其の責に任ずる國家機關を國務總理大臣と云ひます。

 國務總理大臣は國務と關連せざる軍統卒の大權及國務と關連せざる宮廷大權とを除く一切の國務に付き皇帝を輔弼し其の責に任ずる機關であります。

 皇帝の尊嚴は秋毫末と雖も之を侵さるる事なく所謂神聖不可侵でありまして、即ち刑法上責任を負ふ事なきは勿論、國務上に於ても亦無答責であります。此は從前の政府組織法に於て統治權者たる執政が全人民に對し施政上の全責任を負ふとしたるに比し著しい相違を爲す點であります。勿論他より不法に廢立せらるる如き事はあるべき筈はないのであります。國務總理大臣は大權の行使に付き自己の意見を獻替して其の輔弼に付絕對の責任者たるのであります。

 國務總理大臣を除き、皇帝の輔弼機關としては宮廷事務に關しては宮內府大臣があります。宮內府大臣は宮廷事務に關し一切の責に任ずるものであります。又軍令事務に關しては軍政部大臣が皇帝を輔弼する事になりますが國務に關し多數の國務大臣の輔弼制を認めず國務總理大臣なる單獨の機關を認めた事は滿洲國組織法の顯著なる特徵であると信じます。

 國務總理大臣の輔弼の責任は副署に依つて其の存在を證明するものでありまして、國務に關する詔書、勅書、法律及勅令には國務總理大臣が必ず副署する事になつて居りますのは此の理由であります。