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五、くりかへし符号は、同一の語の中で用ひることを原則とし、次のごとき場合にはかなを重ねて書く。

(一)話したために 読んだだけで
それとともに さうしたもののみ
そののち いままで
行っただらう すべてです
(二)香川県かがはけん 馬場氏ばばし たいら知盛とももり
(三)パパ ママ チチハル
〔付記〕右の原則によって、例へば「立てて」を「立てゝ」と書くのはよくないといふ人もあるが、しかし、この「立てて」などは、一方から見れば「立つ」と「て」との二つの単位から成ってゐるものであるが、一方から見れば「立てて」でもって一つの単位を成すものであるから、やはり同一語中の用例であるといふことができる。ゆゑに、「立てゝ」の類の書き方も認められる。

 つぎに、日常の文書において使用率の高い「ことゝ」「ものゝ」「〇〇町々会」などの書き方も、これを許容的に認めておくことが現代一般の慣用に照らしておだやかであらう。

六、くりかへし符号はテン(読点)をへだてゝは用ひない。例へば――

「こ、こ、こ、こ。」と、おやどりがよぶ。
「ちゝ、ちゝ。」と鳴く小鳥の声、
ド、ド、ドーッといふ波の音、
さら、さらと葉ずれの音がして、
「あっ、兎、兎。」
一歩、一歩、力強く大地をふみしめてゆく。
〔付記〕くりかへし符号の適用は、右のごとく一種の修辞的用字法、すなはち文のリズムを表現するものである。
呼び名 符号 準則 用例
(1) 一つ点 一、一つ点は、その上のかな一字の全字形(濁点をふくむ)を代表する。ゆゑに、熟語になってにごる場合には濁点をうつが(例2)、濁点のかなを代表する場合にはうたない(例3)。

二、「こゝろ」「つゝみ」などを熟語にしてにごる場合には、その「ゝ」をかなに書き改める(例4)。

〔備考〕「ゝ」は「」をさらに簡略にしたものである。
  1. ちゝ はゝ
  2. たゞ ほゞ
  3. ぢゝ ばゝ
  4. づつ 小包こづづみ 真心まごころ 案内がかり 気がかり くまざさ